たゆたう草舟
第4章 落葉の風
「お葉、すまなかった。真田の戦に、お前まで巻き込んでしまったな」
信繁様は来た道を戻りながら、私に優しいお声を掛けてくださいました。
「いえ、真田に仕える以上、覚悟は出来ています。私がいる事でお役に立てるなら、囮でもなんでも構いません。が……」
「怖かったか?」
言い淀む私の想いを察しようと、信繁様は訊ねます。が、私は首を振りました。
昌幸様のお役に立ちたい。どんなに小さな力であろうと、支えになるなら使いたい。それが私の、原動力です。
『関係がないならば、わざわざその場に置いていくものか』
つまりそれは、今回の襲撃と私が関係している証です。私に記憶はないのですが、どこかで恨みを買うような事をしてしまったのでしょうか。
もし私の存在が、災いを呼ぶのであれば。昌幸様の足を引っ張るのなら。
「信繁様、ここまでで大丈夫です。私一人で戻れますから」
私は適当なところで信繁様と別れると、城の外へと出ました。まだ未完成、全容の分からない上田城は、三日月を背に、動じる事なく建っていました。
つづく