
スキをちょうだい。
第3章 言葉では伝わらないから
早めに待ち合わせ場所に向かった航太だったが、そこにはすでに環の姿があった。
「はやいな」
驚く航太に、環はふざけて返す。
「そこは『ごめ~ん、待った?』でしょ?」
「前やられてムカついたからやらない」
「えー、残念」
全く残念そうではない様子で言いながら、環は航太に微笑みかける。
「じゃ、行こっか」
待ち合わせに関してしか伝えられていない航太は、首を傾げる。
「どこ行くんだ?」
「内緒」
環は、そう言ったら、絶対に口を割らない男なのを、航太はよく知っていた。
ー俺に任せろってワケか。
航太は心の中で呆れつつ、でもワクワクしながら、彼の後をついていった。
二人はショッピングモールに到着した。
休日ということもあり、人でごった返している。
人ごみが苦手な航太はその時点で、戦意喪失した気分になる。
ーていうか、知り合いに鉢合わせるんじゃ。
航太の心配をよそに、環はどんどん進んでいくのであった。
