
スキをちょうだい。
第3章 言葉では伝わらないから
そして、昼が過ぎて。
ー出かけるのは楽しいけどさ。
航太は一人、ベンチに座って、ため息をついた。
側には抱えきれないほどの買い物袋がある。中身は全て、環が買ったものだった。
その本人は今、目の前のショップの店員と盛り上がっている真っ最中である。
ーこういう女子力、なんとかしてくれ。
人の買い物に付きあうほど、疲れるものはない。
物欲がそんなにない航太は、ただただ連れ回されて、歩き疲れていた。
母親と、東京に上京していった姉のショッピングに振り回された時と全く同じ感覚だった。
しばらくして環が帰ってきた。
「は~ぁ、楽しかった。ごめんね、航太」
「いや、大丈夫」
本当はキレたいところだったが、出先で気まずい空気になるのは嫌だったため、気にしていないふりをする航太。
しかし、それが分からないほど、環は鈍くない。
環は時計をみて、時間を確認すると、大きく伸びをした。
「じゃあ、そろそろ、お楽しみといきますか」
「お楽しみ?」
繰り返す航太に、環は不敵な笑みをみせる。
「俺んち、来るでしょ?」
航太は心臓がはねるのを感じたが、態度には出さずに、言い訳のように呟いた。
「まぁ、荷物もあるしな」
