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スキをちょうだい。

第4章 不穏ナくうき


 必死に武勇伝を語る田中を、航太は冷たくあしらう。

「それ、お前じゃなくて、グッズ目当てなんだよ」

 ふと、田中のケイタイが震えた。

 ケイタイを開き、確認する彼に、航太が茶々をいれる。

「迷惑メールか?」

「失礼な。部活の友だちからだよ」

 メールをみながら、田中は口を開く。

「月野。出雲かなでって知ってる?」

ー出雲、かなで?

 聞き覚えのある名前に、もやもやと昔の映像が蘇る。

ー「こうたくん!」

 幼稚園の頃の幼い映像の後、現在の、廊下でみかけた時の映像が重なり、合致した。

「知ってるかも。幼稚園以来話してないけど」

 航太が頷くと、田中は続ける。

「そいつからさ、一緒に飯食べていい?ってきたんだけど、大丈夫?」

「おう」

「じゃ、送るわ」

 田中がメールを打ち、送信する。

 航太は弁当の中身を片付けながら、気になったことを尋ねる。

「何、友だちいないの?」

「いるけど、みんな女子っぽい」

「はあ」

 意味の分からない答えに、曖昧な相槌を返した時ーー二人の脇の窓に、突然、人影が現れた。

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