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第4章 不穏ナくうき


「やっほ!」

 と、軽くあいさつをしたのは、出雲かなでだった。

「お前、窓からくんなよ!」

「だって、入り口からは恥ずかしいんだもん」

 田中の抗議に、かなでは口を尖らせながら、窓枠をまたいで教室に入る。

 そして、呆然とする航太に、目を輝かせて、近づいた。

「航太くん、ひさしぶりぃ! 憶えてる?」

「お、憶えてるよ、出雲」

 テンションの高さに若干引きつつ、肯く航太。

 かなでは気にせず、まるで女子のように両手で口をおおって喜ぶ。

「わあ、うれしい。カンドー!」

 大げさな喜びっぷりに、田中が冷えた声で水を差す。

「いいから飯食えよ」

 しかし、かなでには通じなかった。

「ちょっと田中、ジャマしないでよ。今、感動の再会中なんだから」

「なんだそれ」

 むすりとふてくされる田中。

 航太が場を取り繕うように話題を変える。

「そういや、引っ越したよな? また戻ってきたんだ?」

 かなでは二人の机の近くに椅子を移動させながら、肯いた。

「そうなの。今度のお父さんがこっちの人だったからさ」

「今度…‥?」

 おそるおそる聞き返す航太に、かなでは笑顔で言った。

「お母さん再婚してさ、今、バツ9」

 妙な空気が流れる。

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