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第4章 不穏ナくうき


 ふと、航太のケイタイが震えた。
 見ると、かなでからきた催促のメールだった。

 それで航太は、かなでを待たせていたことを思い出した。

「なぁ、これって誰にもらった?」

 去り際に、航太は梨恵に尋ねた。

「えっと、同じ学年の七瀬って女の子。クラスはわからないんだけど…‥」

 梨恵が言うには、今朝、教室にいたところを【七瀬】に呼び出されて、写真を渡されたのだそうだ。

ーななせ?

 聞いたこともない名字だった。

 それに、梨恵の様子からしても、彼女の知り合いではなさそうだった。

 状況からすれば、ものすごく怪しい人物だが、梨恵と環のカップルは学校内で知らない者はいないほどに有名だ。

 だから、【七瀬】が梨恵に写真を渡して、忠告をしても何ら不思議ではない。

 【七瀬】が、相当なお人好しならば、の話ではあるが。

 思案しながら昇降口へ急ぐ航太。

 靴置き場までくると、ガラス戸の向こうにかなでの姿を認めた。

 彼と話している女子の姿も。

ーん?

 航太は足を止めて、2人を窺った。

 かなでの険しい表情から察するに、世間話ではなさそうだった。

 怒り顔のかなでに何やら言われた女子は、不安そうな表情をして頷くと、外へ出て行った。

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