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第4章 不穏ナくうき


 航太は、嗚咽を漏らす梨恵を見つめーー微笑んだ。

「大丈夫。オレに任せて」

 梨恵のポカーンとした反応を受けても、航太は微笑みを崩さなかった。

「この写真を作ったのが誰なのか分かれば、きっと、東堂も元に戻る。だから、オレなんかの前で泣いちゃダメだ」

 そう力強く言う航太を、梨恵は潤んだ瞳で見つめた。

「月野くん…‥」

 相手を見直したのか、彼女は涙をぬぐい、調子を変えて言った。

「あ、あたしも、なんか手伝いたい!」

「いいよ。藤吉さんは東堂の近くにいてあげて」

 制された梨恵は残念そうにしたが、すぐに、照れくさそうにはにかんだ。

「ありがとう。月野くん、いい人だね」

「そんなことないよ」

 首を振りながら、航太は複雑な気持ちになる。

ーオレは君を騙しているんだから。

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