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スキをちょうだい。

第6章 ボクダケガ


 昼休みになってすぐ、航太は、七瀬がいるというクラスへ向かう。

 最近では、それが習慣になりつつあった。
 しかし、こんなに通い詰めているにも関わらず、当の本人と会ったことは一度もない。

 本当に、七瀬が存在するのか疑わしく思えるほどだった。

 だからといって、教師に確認するのは気が引けた。
 いい言い訳が思いつかなかったし、思いついたとしても、大事にされてしまいそうだからだ。

「すいませーん」

 航太が教室の出入り口から顔を覗かせると、近くにいた女子が反応した。

「また月野じゃん。七瀬でしょ?」

 彼女は出入り口から近い席に座っているため、毎回、航太の相手をしてくれていた。

 航太が頷くと、彼女はニヤニヤ笑いを浮かべた。

「しつこいねぇ。もしかして好きなの?!」

「違うわ。ちょっと用事があるんだよ」

 否定しても、まだニヤつきを止めずに、彼女は言った。

「でも残念。七瀬、またまたいないよ」

 航太は、大きなため息をついて、食い下がる。

「どこにいるか、知らねーの? 本当に」

「知らねーよ。今まではすみっこで本読んでばっかだったのに」

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