
スキをちょうだい。
第6章 ボクダケガ
どうやら七瀬は実在するようだが、最近になって、教室から姿を消すようになったらしい。
まるで、航太から逃げるかのように。
ー逃げるってことは、そういうことだよな。
思案する航太を、興味深そうに眺めていた彼女が、不意に声を上げた。
「あ」
「ん?」
「七瀬」
振り返ると、見覚えのある女子が立ち尽くしていた。
ーあれ、この子…‥?
彼の脳裏に、雨の日の映像が浮かび上がった。
と、同時に、立ち尽くしていた七瀬が踵を返して走り出した。
「あっ?! ちょっと!!」
航太も慌てて後を追いかける。
昼休みでそこそこ人気の多い廊下を、七瀬は器用に人をよけて、走っていく。
一方の航太は何人かにぶつかり、謝りながらも、必死に食らいついた。
途中、環と梨恵の姿をみた気がしたが、構っている余裕はなかった。
