
スキをちょうだい。
第8章 好きをちょうだい
朝、航太はいつも通りに学校へ向かった。
教室に入ると、他のクラスメートにチラチラ見られながら、田中とかなでが騒いでいる。
心臓が、妙に早く打っているのは、少なからず、かなでに恐怖しているからだろう。
しかし、負けるわけにはいかない。
航太は、深呼吸を一つして、二人の輪の中に飛びこんだ。
「おっすー!」
明るい調子でバチーンと田中の肩を叩く。
「いってーな!」
田中が睨んでくるが、航太は気がつかないフリをした。
かなでがクスクスと笑う。
「あーもう! やってらんね!」
田中は言いながら、勢いよく立ち上がった。
「あれあれ? もう降参?」
かなでが茶化すと、彼は、いーっと歯を見せた。
「トイレだよ! ばーか!」
そのまま、がに股歩きで教室から出て行った。
航太は、かなでと二人きりになった。
今日一番、彼が望んでいた状況であるが、思いの外、緊張していた。
チラリと教室を見渡す。
教室には、クラスメートたちがそこそこ集まっている。
環の席は空いている。
