
スキをちょうだい。
第8章 好きをちょうだい
「トモダチになろう?」
かなでは、しばらく呆けた様子だったが、ふっと吹き出した。
「航太くんはお人好しだね」
言いながら航太の手を握り、二人は立ち上がった。
それからかなでは、制服のポケットからデジタルカメラを取り出すと、何のためらいもなく床に落とした。
あっ、と、声をあげる航太の目の前で、やはり何のためらいもなく、それを踏みつけた。
スナック菓子を踏んだような、小気味よい音が響く。
「い、出雲、何もここまで」
狼狽する航太に、かなでは笑う。
「いいんだよ。また買ってもらうからさ」
さらりと、金持ち発言をしつつーーかなでは、環と視線を合わせた。
「今度こそ、あんたから奪ってやるから」
「やってみなよ。無理だろうけど」
環がニヒルに笑うと、かなでは鼻を鳴らして、教室を出て行った。
