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スキをちょうだい。

第8章 好きをちょうだい


 それを見送り、航太を見る。

 彼はカメラの残骸を、もったいなさそうにいじっていた。

 環は呆れた笑い方をして、航太の頭に手をおいた。

「本当、お人好しだよ。航太は」

「うるせーな」

 言いつつも、航太は嬉しそうであった。

「じゃあ、終わったことだし、帰ろうか」

 環が、背伸びをしながら言った。

 時計は、もうすぐで昼休みが終わる時刻を示している。

「あっ、待てよ」

 帰ろうとした環を、航太は呼び止める。

「まだ、アレがあるだろ」

 もじもじする航太に、環は意地悪く聞き返す。

「アレって?」

「分かってるくせに」

「言ってくれなきゃ分かんないよ」

 航太は、顔から耳まで真っ赤にさせて、相手を睨んでいたが、顔を下げて、ボソボソと呟いた。

「なに? 聞こえない」

 環は、なおも意地悪をやめない。

 航太は顔をあげて、金魚のように口をパクパクさせてからーー言った。

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