保健室の扉の向こう
第5章 黒
「あ、雪ちゃん」
振り向こうとした瞬間、頭が固定されて動かなくなった。でもこの声でなんとなくわかっていた。
「今日、一緒に帰る約束してました。平田先生、すみませんね」
そんな約束…してないよ?
「そうか…」
平田先生は、言葉は暗いものの表情一つ変えずにこやかなまま玄関へと向かっていった。
秋田先生の腕の力すっと抜けて、そのスキに逃げようとした。
が、やっぱり駄目だった。
手首を掴まれ、逃げれない。
「俺から、逃げようなんて甘いよ」
「はい…」
「お仕置きな」
掴んでいたところを手首じゃなく私の手に変えて恋人つなぎをする。