保健室の扉の向こう
第5章 黒
「いつから貴方のモノになったと思ってるの」
いつの間にか私の目の前に立っていた。ぎろりと睨むその目が、美しくあり恐怖を感じさせた。
「な、なによ」
恐怖のあまり、声がしっかりと出ない。目すら合わせられなくて、縮こまってしまった。
「…さっさと帰りなさいよ。私と先生はこれから用事があるの」
唇を噛み、涙をこらえる。
「ユズちゃん、ごめん」
「えっ?」
「今日、用事できた。だから帰んなきゃいけないんだ。じゃあ」
先生は、普通に彼女のお誘いを断った。そして私の手を掴みとり、にこっとこっちを向いて笑った。
涙が堪えられなかった。