保健室の扉の向こう
第7章 偽り
「もう嫌ッ…!」
そういった彼女は赤く腫らした目を隠し、小さく呻きながら泣き始めた。
「そっとしておいてもらってもいいでしょうか…」
申し訳なさそうに言う彼女の母親。私は、頭を下げてまた廊下へと戻っていった。
――
―
来た道を辿って帰ると、前からドタドタと足音が聞こえて止まってしまう私。
その正体は、愛しの彼だった。
「秀也っ…」
その姿を見て泣き出してしまった。
もう彼のものにはなれない。
彼は、華川ユズと…。
そんなこと考えたくもないのに、浮かんでくるものはひどい妄想ばかり。
「雪ちゃん…泣かないで」