Happiness
第2章 パンつながり
朝も、早い。
まだ、7時ぐらいに。
入口のベルが鳴る。
「あ、まだ開店じゃなくて…」
調理場から、出ていくと、
キャップを被った人がいて。
「あ、ごめんなさいっ。
いい香りがして、電気付いてたから。」
確かに、5時から仕込みをしてるから、電気はついてる。
「また、来ますね。」
そう言って、後ろを向いたその人に、
「あ、ちょっと…!
、、、ちょっと待っててくださいっ」
毎朝、朝ごはんがわりに焼いてもらってるパンを持って、
驚いてるその人に渡す。
「これどうぞ!」
「え、、?」
「あ、えーと、クロワッサンです!」
「あ、それは見ればわかるんですけど(笑)
良いんですか?これ、、。」
「はいっ、私のなんで。笑
その代わり、今度は、開店してから来てください!」
今思えば、なんでこんなことしたんだろうって思う。
なんでこんなはりきってたんだろう、って。
黒いワンボックスに乗り込むその人は、
私をみて、ペコッと、もう一度お辞儀をして、
まだ朝方の街へ、走っていった。