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~夢の底─

第1章  ─水と炎と。

 「チャンミンさん」旅行地図を膝に広げた。「ここ─御堂のそばに、展望台広場ありますよ…行ってみませんか」地図の端が、海風にはためく。「あ、この御堂…脇道、通ったよ」「少し高台にあるみたい─」…砂浜に出ると、風も日差しも強い。「歩くと遠い? ─でも海から離れると、風も静かかも…」「ゆっくり、行きましょう。まだ午前中で…陽が暑いけど」 浜辺の途切れたところから、細長い道が伸びていた。二人の後ろの海岸に、白い波頭が砕け散る。


 ──御堂は竜王神を祀ったもので、全羅南道にも同じやしろがあるらしい。「すごく古いところなんですね」御堂が見える柵に道案内のボードがあり、やしろの由来も記されていた。「あ。この向こう、通った道だ」「高台の近道は…」「─僕は車だった、アスファルト道路だよ」ヒースは奥まった方に、走り込むと、「わかりました。ここから、上がるんです」振り返ってチャンミンを呼んだ。狭い道の青い空の上に、展望台の塔が見える。


 ─「かなり、歩いたんだね」「…1時間、近く? 初めて来たから、時間かかったんでしょう」高台にあるテラスは、見晴らしが良く、すぐ近くに海があるように見える。…海からの風も来る。

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