
~夢の底─
第4章 冬色午後
「─俺からの、気持ち。受け取って欲しいんだ」「ユノ先輩のお気持ち…。お金持ちですね、先輩」柔らかく、微笑んだ。「先輩おひとりの気持ち? ……金額多過ぎます」 茶目っ気たっぷりの口調で云いながら、パープルのスエードの小ぶりなリュックに封筒を入れた。「これで失礼します」「外かなり寒いし、もう一杯温かいの入れるから、飲んで行って─」キチネットに立つユノに、「あの、明日の天気知りたいんです。TV観せてください」「香港は暑いぐらいだろうね」湯気の立ち上るカップを、ヒースの前に差し出した。「あ─曇り、傘もいるかな」カップを唇に運びながら、首を傾げる。画面はCMに変わる。「俺にいつでも電話くれる?」「─いいんですか、いつでも、─なんて…」「後輩だもの、弟なんだから、そうしていいんだ」黙り込み、俯いた頬に青白い光が、TV画面から射す。──砂漠を白馬に乗り、白い衣装で過る…砂の影は濃く、黒い。…黒い砂漠の影は、漆黒の闇となり、夜闇の湖面─古城を映す…。天の河を流したような煌めきの髪。白い横顔。〈儚〉と薔薇色の文字。「香水…トワレ? 綺麗なCF…」バンパイアの闇を纏う衣装のチャン・グンソク。画面は黒くなり、金文字でAsia-Princeと描かれた紫のボトルが映った。
