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~夢の底─

第4章 冬色午後

背を向けたまま、言葉を投げつけた。「どんなことを?」「どうして僕がユノと一緒に暮らさないのか……」「それは俺も疑問だね、訊いたけど…お前にさ─」「自分でユノ、考えてよ」冷たい口調になった。「俺と居たくない。それだけだろ」「─どうしてだか、…考えてよ」「チャンミン。自分の気持ちはその都度に、云ってくれよ」拗ねたように、また、黙る。「あの子に、二人の気持ち渡す時もお前、そういうふうで…」ユノが口を噤んだ。
 室内ライトが、未明の空の白々しさで、リビング・ルームを照らす。
「─部屋に帰る時に、お前が、居ても居なくても…チャンミンと一緒の部屋。そういう生活がしたい」無言のままの丸めた背に「俺の思いだから、お前はまた違うんだろうけど─」ユノから離れた大きな窓の、遥か下のペイブメントを巨大なランプの車が走って行く。
 「しあわせだよ─ユノは」独り言に似た呟きが嘲り笑う。ユノの顔がチャンミンに向けられ、二人の眼差しが、夜更けのマンションの部屋で、ぶつかる。砕け散った黒水晶の欠片の光ある目が、さらに嘲りの色を浮かべた。

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