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~夢の底─

第4章 冬色午後

 無言のまま、目の前のチャンミンを見つめ、息を止めるように口元を引き締めているユノに、「その好きになったひとと、二人で」両の手の指先を、祈りを捧ぐ仕草に組み合わす。「休みの日─会って」深紅の華めいた唇が、一言一言を噛みしめる口調だった。
「二人だけで…静かにいろんな話を、出来たら」──ゆっくり、顔を上げ遠い夢をみる目を彼方に向けた。ユノを忘れ去った様子が、チャンミンを独りきりにみせた。
 「それをめちゃめちゃに、…小さな、僕の夢を壊した。ユノ」
 見つめあう二人はみじろぎもしない。……ただ時間だけが、二人の間を夜の砂漠の砂嵐のように過ぎて行った。  
 「ユノ。面白かったでしょう? 楽しんだ? ─ずっと笑ってたものね…僕を弄んでた時」反射的にまるで、目を射た光が眩しいかのように、ユノは、顔を逸らし、俯けた。「僕…怖がりのもともと、臆病だし…」言葉は途切れて、しまう。「ユノがもっと、もっと」「チャンミン」堪り兼ねた調子で名前を呼んだ。「その時、俺したこと、未熟な自分…今も恥ずかしいけど過ちだったってお前に─」「過ち! ……そう?」口元がまた微かな笑みの形に歪んだ。
「そうなんだ。そうなんだよね─ユノ…」

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