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~夢の底─

第4章 冬色午後

苦い笑いが、彫り込んだ形の良い唇に広がった。「そうだよね、…初めて、で─僕は」極くちいさな笑いに似た、息をフッと洩らした。「ユノは慣れてるから」「慣れてたなんて」「ああいう…あそびにも慣れてたみたいで」脇を向いて、チャンミンは小さく笑い声を出した。「違う─弄んだ……なんて」「いいんです。僕はユノが眩しい人で…。…その時から…だから──」ユノが問うように見つめる。「だから、嫌われたら…リーダーでルームメイトの…憧れる…ユノだから─だったけど」
  ──神の前に頭を垂れる姿が影になり、彫刻の形をとった。その彫刻の影が口をきいた。「本当に嫌なら…拒んでた」 はるかな思いを、辿る沈黙……。「気持ちが疎んじてたなら、そうした」 
 また、ひとときの静けさのあと──、「ユノならいいって思ってた。……それに…ユノは別の大事な人がいて─ね?」激しい素振りでチャンミンの言いかけた言葉を遮る─。「年上の─兄さん。毎日、─毎夜同じ部屋の、昼間も一緒で─でも手の届かない人だった、僕諦めてた」「あ、─チャンミンだから、─」 
 ………「でもやっぱり僕はユノに片想い─悔しい」顔を上げた。「悔しい」悲しげに、影は揺れた。時の流れを遡る言葉が、続いた。

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