テキストサイズ

~夢の底─

第4章 冬色午後

 ──コトリと、愛らしい音をたてた。チャンミンの金のゆるやかな髪の垂れた額が、分厚い窓ガラスに押しあてられた。「大切なものが何も…ない─ユノは、やっぱり、不幸…な人間だ」ピクリと、がっしりした岩盤の肩がその一言に、動き躊躇いの口元が動こうとする。
 「いいですユノ…。今さら─の話です─」ソッとささやくチャンミンは、天使のかなしい微笑みを、浮かべ─「僕とあの子─ヒィスのこと…僕の責任で、したことですから─自分で始末します。相手が香港に帰ったからって─、それで済ますつもりありません」事務的な、淡々とした声だった。
 「僕ユノの昔を許して忘れたい。でも心は自由にならないものですね」大窓に背を寄りかからせ、下を向くと、押さえた調子になって云う。
 「ユノが何であろうと構わないんです。僕の中にこそ、問題がある…んです」ユノが顔を上げた。「チャンミン─。お前は自分を責める必要がない」「違うんです、ユノを許したい。忘れたい。過ちを認めてるんだもの─そうじゃないんです」「チャンミン」「謝りもしない、だったら許していません、それで─」「チャンミン」「僕…。ユノにいろんな思いぶつけそうで、怖いんです、自分でさえ持て余すどうしようもない思い……、沸き上がって来る…」「チャンミン──」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ