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~夢の底─

第1章  ─水と炎と。

 …「ね、良かったら旅行─いっしょに行かない?」「旅行…です─か」驚く顔が愛らしい。チャンミンは微笑むと「びっくりした? 来月の初めなんだけど…都合どう?」「あ…まだアルバイトは続けるし─でも」「─無理? 急だものね」ヒースの生真面目な表情に笑いかける。奥まった階段を、賑やかに降りて来たグループが、隅のカウンターで乾杯を始めた。 
 「…旅行って云っても…近場で、バスで行ける。去年、海中公園が出来た海べり─」「チャンミンさん。1日なら休めるし、日帰り旅行なら僕も行けそうです」「良かった、じゃ最終日に合流しよう。帰りは一緒のバスに乗ろう」小さなガイド本を開いて、「場所教えるね。東海の…」「─ユンホ先輩に、いいんですか」「そんな心配いらない」「そう…ですか?」 首を傾げると、黄金の色合いにキラリと長めの髪が光った。
「ユノは僕を弟扱い。だから─、構わない」黙ってヒースはエスプレッソのカップを、テーブルに戻す。「気楽に、香港帰る前の思い出旅行で…いいじゃない?」向かい側のビルに、黄色いライトが灯った。「はい─。場所教えて下さい」白い表紙の手帳を出した。「くる? ムリに誘ったみたいだね…」優しく云った。

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