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Tears ~緑のしずく~

第6章 恋模様~橋上の月・再会Ⅱ~

〝この売女め、今更、もっいぶって、どうするってんた。今し方まで俺に何度もやらせたくせに〟

男が汚いののしりの言葉を
 吐き散らしながら
  去ってゆく

私は ただ一人
 橋のたもとで呆然と涙を流す

 そんなことが
幾度 続いたことか
 あなたが帰ってきてくれたのだと
優しい笑みでひろげた あなたの
腕に飛び込んだはずなのに
夜中に眼が覚めると
隣にいるはずのあなたが
見も知らぬ別男に変わっている

人はいつしか
 私を狂っていると呼ぶようになった

 私は
 あなたに似た幾人もの男と夜を過ごし
 夢と現実のはざまを行き来し
現実に戻っては絶望した

いっそのこと
 本当に気が狂ってしまえば
あなたに似た男を
 あなただと思い込めたまま
時を過ごせるのに

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