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Tears ~緑のしずく~

第11章 花水木の咲く町で

どうして あのとき
 気づかなかったのかしら

あなたの瞳がこれまでとちがって
 私ではなく
 遠い向こうを見つめていたことを

思えば
私は自分で自分の首を絞めるのと同じことをしたんだわ

私は浅はかにも
 あなたの心が
私のそのたったひとことで
 遠ざかってしまったことにすら
 気がつかないでいた

坂の途中で見かけた
 小さな二階建ての住宅
 あなたが足を止めて
 ふとつぶやいた
〝実咲と結婚したら、あんな家に住みたかったな〟
 あなたのまなざしがつかの間 揺れた
 

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