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Tears ~緑のしずく~

第13章 22歳の花嫁~あの日に帰れるとしても~

―もしもし、優(まさる)さんはいますか?

 聞き慣れない若い女の人の声
 あれは婚約指輪を買いにいった日
 耳にしたユーミンの歌にも似ていた
 私たちの別離を告げる予兆のように
私の耳に不吉に響いた

 私の母はそのとき
既に気づいていたという
 彼が他の女性と
関係を持ったのだということ

 それでも母は
あまりにも彼を信じている私に
いきなり真実はつられなかったそうだ

風俗のお店から女性の声で
お勘定のことで
 ご主人と話がしたい

 そんな電話がかかってきたら
夫が何をしたかはすぐに知れる

 母は後になって
苦笑いとも泣き笑いともつかない
複雑な表情で言った

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