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Tears ~緑のしずく~

第13章 22歳の花嫁~あの日に帰れるとしても~

思えば
 彼は色々な顔を持ち
 二つの世界に住んでいた

 私と暮らす昼の世界は
彼にとっては偽りであり
仮のもの

 夜に闊歩しいた世界こそが
彼の本来 所属する場所であり
そこで見せていた顔こそが
ホンモノだったのだろう

 いくら考えみても
その二つの世界はけして
 相容れない
 交わることのできない世界だった

 あれから気の遠くなるような歳月を数え
 今 私にはささやかで
平凡だけれど
 堅実な家庭という居場所がある

 あれから
私は外見と口の良い男には
用心するようになった

 世間知らずであった私が
身につけた貴重な知識だ

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