「先生、食べちゃっても良い?」
第1章 はじめに
私は元々、彼の事を特別意識していたのかもしれない。
一時間目の数学の授業中、教壇から見るのは今日も彼ばかり。
(……あ、今日も寝てる……曾根崎君)
試験前だというのに体を机に預け、突っ伏した状態でスヤスヤ寝息を立てる彼、曾根崎(そねざき)キョウは高校二年生であり、私の教え子。
女子から人気がありそうな可愛らしいルックスに今時の高校生という感じで、クラスでは明るいタイプ。
しかし彼の授業態度は最悪で。
今までに私が「もっと危機感を持って授業を受けて欲しい」と何度注意しても、変化を見せる事なく。
彼の居眠りする姿を見る日々ばかりが続いている。
そのせいか、どうしたら真面目に授業を受けてくれるんだろうと考えている内、特別意識してしまい毎日曾根崎君の事を考えてしまっている。
……だからと言って良い考えが浮かぶわけでもないし、曽根崎君の寝顔にモヤモヤしながらいつの間にかいつも授業が終わってしまっていた。