「先生、食べちゃっても良い?」
第1章 はじめに
(あーあ、今日も最後まで起きなかったな……曾根崎君)
ため息を吐きながら肩を落としつつ教室を出ると、私はトボトボと廊下を歩く。
しかし……突然後ろから声を掛けられると、驚きながら立ち止まり、後ろを振り返った。
「葉月先生、ちょっと良いですか?」
声を掛けてきたのは曾根崎君だった。
私に何の用だろうか。
不思議に思いながら、問い掛ける。
「何……?」
「先生に数学の事で聞きたいところがあって」
「えっ」
あの曾根崎君が私に数学の質問……?
これは夢?
嬉し過ぎて、私は興奮しながら返事をする。
「うん、勿論良いよ」
「じゃあ放課後、特別室で待ってます」
曾根崎君からそう言われつつニコリと微笑まれると、つられて私も微笑んでいた。