「先生、食べちゃっても良い?」
第14章 キッチン
キョウ君との同棲を決めてから、四日後の土曜日。
キョウ君のマンションに今日から暮らす私は、空き部屋だった部屋への引っ越し作業を終えると、その部屋らしくなった部屋の中で空のダンボール箱を前に座ったまま、ふうっと一息ついた。
「よし、これで荷物の整頓は終わり」
そして壁時計の方へ視線を送ろうとする……が、すぐ隣に立っているキョウ君と目が合う。
何か不満げな表情で、明らかに機嫌が悪そうなキョウ君は、さっきからずっとこうして恨めしそうに私を睨んでいる。
「……先生、何で部屋別々なの? 俺と同じ部屋は嫌……?」
「いや……そういうわけじゃないんだけど、ほら、私寝相悪いから……」
「先生のバカ……」
「うっ……機嫌治してよ、キョウ君」
寝相が悪いというのも本当だけど、本当は一緒の部屋が気恥ずかしいというのが本音。
それに今年キョウ君は受験生だし、勉強の支障にならない様に考えての事だった。
そんな私の気持ちをきっとキョウ君も分かってくれる筈……。
「……寝る時は絶対一緒だからね」
……私の隣にしゃがんで、キョウ君が頬をぷうっと膨らませながらそう言うと、少し不安になってしまうけど……。