「先生、食べちゃっても良い?」
第2章 特別室
そして放課後。
特別室に入ると、机の上に参考書や問題集を開いて椅子に腰掛けた。
(何で特別室なんだろう)
そう考えもしたが小さな事はあまり気にしない性格もあり、楽観的にすぐ忘れた。
それより曾根崎君がやる気を出してくれたという事の方が嬉しくて……頬が勝手に緩む。
「先生、遅れてすいません」
ドアが開いて曾根崎君が入ってくると、バレない様慌ててキリッとそんな顔を引き締めた。
「あ、ううん、私も今来たところだから。……じゃあ、始めましょうか、勉強」
「はい、お願いします」
「まずは何処がわからないの?」
尋ねる私の隣の席に曾根崎君は座る。
けど、そんな彼に少しだけ違和感。
椅子を私の席の方へ近づけてきたのは良いものの、お互いの肩と肩の距離はもう数センチしかなく、膝と膝は触れ合った状態。
わざとなのかそれとも偶然なのか気になっている内、更に曽根崎君の右太腿が私の左太腿にくっつけられてしまう。
どうしよう。生徒とこんな事……意識するなんておかしいだろうが、私の気持ちとは真逆で、だんだん体が火照り、心臓がドキドキし始めた。
(……私、何意識してるの。折角曽根崎君がヤル気を出してくれたんだから、勉強に集中しないと……)
「……先生? どうかした?」
「えっ? いや、……なんでもない」
意識している事を気づかれない様平然を装いながら首を横に振ると、そんな私を見て何故か曾根崎君がクスッと笑う。
「先生……頬赤くなってる。可愛い」
そして顔を覗き込まれたかと思うと、すぐにちゅっとキスをされた。
その触れるだけの優しい唇に、私の唇は体ごとフリーズした。