バラードは君だけに
第3章 彼氏
「美羽ちゃん。放課後空いてる?」
「え、うん。今日はバイトもないし…」
「じゃあ曲も決まった事だし、オレんちでリコーダーの練習しようよ」
「海斗君の家で?」
「うん!」
私は少し戸惑った。男の子の家に行くなんて初めてだし。家の人の事とかも気になる。
ーーーー
海斗の家は、私の住む隣の学区にあって、意外と近い事がわかって驚いた。
「さ、入って」
「はい。おじゃまします…」
結局来てしまった。
玄関に入ると、そこには男物の靴と女物のかわいい靴が並んでいた。
「あ、リビングでもいいかな?
兄貴が今女の子を連れて来てるみたいだから」
「私ならどこでも」
海斗君って、お兄さんがいたんだ。
リビングに座って部屋を見渡していると、海斗がジュースを持ってきて渡してくれた。
「どうもありがとう」
そして私達はリコーダーの練習を始める。
海斗がソプラノで、私はアルト担当だ。最初は別々に練習をする。
リビングに響くふたつの笛の音。
海斗はひっしで譜面を見ながら格闘していた。
「ぷっ」
「こら、笑うなっ。オレ昔からリコーダーはどうも苦手だよ」
「教えてあげる」
こんなに笑うの、私は久しぶりだった。