バラードは君だけに
第3章 彼氏
五時間目は音楽の授業だった。
先生がみんなに言う。
「えー来月は曲目自由で、リコーダー演奏を発表してもらいます。
なのでこの時間は、まずグループを作って打ち合わせをしていきましょう。では各自移動して始めて下さい」
ふぅー。先生は簡単に言うけど、私はどこのグループにも入れないから、こういう場合大抵一人で演奏する事になる。
男子も女子も、友達同士で楽しそうに固まり始めた。
と、そのとき。
「一緒にやろう」
なんと海斗が私の席に来たのだ。
みんなが私達に注目する。
何やらひそひそ話をしている者もいた。
「海斗、俺達とやらねぇの?」
海斗の友達、下野
(シモノ)君が不思議そうに聞いた。
「ごめん。オレ今日からこの子の彼氏だから、二人でやるよ」
「はあぁ〜っ?マジ!?」
驚く顔の下野君達。あたりまえだよね…。
私は焦って海斗に言った。
「何言ってるの?そんなの絶対だめっ。私は一人でも慣れてるし大丈夫だから」
「何が大丈夫なんだ?先生はグループを作れって言ってるんだ。一人でやるなんてオレが許さない」
「…」
どうしたらいいのかわからなかった。
でも嬉しくて。
海斗の優しさが…
温かさが。