バラードは君だけに
第3章 彼氏
玄関には、まださっきの女性の靴がある…。
そこへ、タンタンと誰かが階段を降りてきた。
海斗のお兄さんかしら?だったら挨拶しなきゃ。
「っ…!」
その人は深緑のカットソーにジーンズ姿で、しなやかな体つきが引き立っていた。
「あぁ兄貴、この子俺の彼女なんだ」
すかさず海斗に紹介されて、私はたどたどしく答えた。
「こんにちは。鈴木、美羽です」
「…そう、どうも。海斗の兄です」
一瞬優しく微笑んだ彼は、すぐ奥の方へ行ってしまった。
海斗と同じで背が高い。
違っているのは、海斗のさらさらした黒髪に対し、お兄さんは茶色がかった、ふんわり系の髪型をしていた事だ。
私の目は、お兄さんに釘付けとなった。
海斗のお兄さんは…
とても大人っぽくて、素敵なオーラを放っていた。