バラードは君だけに
第1章 出会い
小五の冬。
私は歩道橋の真ん中に立っていた。
「…ふぅ」
ランドセルと黄色の帽子を足元に置き…両手で柵をつかんで勢いよく地面を蹴った。
目を閉じ…頭を前に下げかけた、その時。
「やめるんだっ!!」
バッ…
誰かが私の身体を強く掴んだ。
ドサッ!
「きゃ…!?」
私は後ろへ思い切り倒れ込み、
誰かの膝の上に乗ってしまっていた。
「…っ、いって〜」
男の人の声だった。
胸の鼓動が激しく鳴る。
誰?
おそるおそる振り返って見上げると。
「はぁ…はぁ…良かったー、間に合って」
「っ…」
その瞬間、私はパッと膝から離れた。
私を助けたその人は、中学の制服を着たお兄さんだ。
しかもかっこいい。
「おまえさぁ何やってんだよっ、こんなばかな真似して」
「あ、あの…」
彼の凛々しい瞳に強く見つめられ、私は俯くしかなくて。
でもこれだけはわかった。
この人はきっと、優しさに満ち溢れた人なのだと。