バラードは君だけに
第1章 出会い
黙りこむ私に彼はランドセルを背負わせ、帽子をかぶせた。
「これからどうする?」
「…」
どうする?と聞かれても、私は家にも学校にも戻りたくなかった。
私のいる場所なんて、どこにもないから…。
それを会ったばかりのこの人に、どう言えばいいのか私にはまるでわからなかった。
俯く私の足元に涙がぽとんと落ちた。
それを見た彼は、私を抱きしめた。
「よしよし」と言って。
「っ…!」
彼の胸に顔が埋まる。
「ぐすっ…」
「わかったよ…家まで送ってあげるから、もう泣かないで」
ちがう…ちがうの…。
私は首を横に振った。
「…学校に…行きます」
「本当に大丈夫なのか?いじめられてるなら、無理して行く必要はないんだぞ?」
彼は私の目を心配そうに覗き込んだ。
「…大丈夫です…」
不思議だった。
なぜ見ず知らずの私に構うのだろう?
こんな人がいるなんて
私は人生で初めて知った。