バラードは君だけに
第5章 会いたかった人
「帰る…」
海斗にすべてを打ち明けた今、私はこれ以上こうしているのがいたたまれなかった。
「美羽…行くなよ!そんな家に帰るんじゃないっ」
海斗に腕を掴まれたが、私はそれを振りほどいて言った。
「だめよ!私はあなたの彼女でいる資格がないの」
「そんな事はないっ、何言ってんだ!」
「お願い、今日は帰らせて。一人になりたい…」
「美羽っ!」
私は夢中で廊下へ飛び出した。
しかしそこで私は、思わず息を呑んだ。
「…っ」
なんと部屋の前に、お兄さんが立っていたのだ。
「…」
驚いた目で私をじっと見てくる。
もしかして今の話、聞かれてた…よね?
泣き顔まで見られて、もうどうしていいかわからない。
「おじゃましました…」
とだけ言い、私は階段を急いで降りていった。