バラードは君だけに
第1章 出会い
彼は私を、小学校の正門まで送ってくれた。
「いいか、我慢するなよ?誰かにヤなことされたら、必ず先生に言うんだ」
私は笑顔を作って頷く。
お兄さんとはここでお別れだと思ったら、とても寂しい気がした。
初めて会った人なのに、なぜこんな気持ちになるんだろう?
すると、そんな私に彼が言った。
「君がもう少し大人になったら、僕の彼女にしてあげる」
「えっ、ほんとですか!?」
「うん。だからもうさっきみたいな事は、二度とするんじゃない。わかった?」
「はい」
私はドキドキして彼を見つめた。
「俺は吉野湊(ヨシノミナト)っていうんだ。よろしく」
「あ、私は…鈴木美羽
(スズキミウ)です」
「美羽ちゃんか…かわいい名前だなー」
「っ…」
かわいい名前なんて、誰にも言われたことなかったから嬉しくて。
「じゃあな」
別れたくなかった。
でもしょうがない。
彼は校舎へ入って行く私に、いつまでも手を振ってくれた。
暖かい微笑みを浮かべて……。