テキストサイズ

バラードは君だけに

第9章 本心


何か話さなきゃと思っても、私は言葉が出てこなかった。でも、

「アパートの住み心地はどうだ?」


「日当たりもいいし、とても快適です」


「それなら良かった」

こんなささやかな会話が、十分嬉しくて。


しばらくすると湊さんが車を止めた。
そこは一軒の洋菓子店。

「ちょっと待ってて」


「…?」

ーーーー

車に戻った湊さんが、私に手渡して言う。


「はい、ケーキ。甘いもの好きでしょ?」

「えっ!好きですけど…」

「ごめん、これから僕バイト行かないと。ほんとなら食事でもしたかったんだけどね」

「…っ」


またあなたは、私に優しくするんだ。
いつも不意打ちで。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ