バラードは君だけに
第10章 壊れてゆく心
「美羽っ、どうしたんだよ…」
オレは美羽の体をそっと揺すった。
「はっ…海斗、どうしてここにいるの?」
美羽はびっくりした目でオレを見つめた。
「君に会いたくなっちゃってさ。ほいアイス」
「わぁ、ありがとう」
美羽がかわいく微笑んだので、ほっとした。
そしてオレは開けっ放しのカーテンを閉めながら聞く。
「着替えもしないで寝てしまうなんて、美羽らしくないな?」
「海斗聞いて…さっきね、湊さんがアパートの下にいたの。だけど近づいたら消えていて」
「えっ、兄貴が?そんなはずは」
「ほんとにいたの!…うそじゃないよ…」
やっぱり美羽の様子は変だった。
「わかったよ、信じるから。どうして泣くのさ?」
「だって……」
オレは美羽の背中をさすりながら、激しく動揺していた。
兄貴なら朝からモデルの撮影で地方へ行っていて、遅くなると言っていた。
だからここに来るなんて、不可能だ。
何がなんだかオレにはわからない。
ただ確かなのは、
美羽が兄貴の事で泣いている、という事実だった……。