バラードは君だけに
第2章 逆境
月日は流れて、私は高校三年生になっていた。
昼休みはいつも、一人屋上で過ごしている。
マスクを外して、緊張感から解き放たれるひととき。
「うーん…っ」
私は青空に向かって、思いきり伸びをした。
五月中旬の、さわやかな風が吹き渡る。
私は自分で作ったお弁当を膝の上に広げた。
玉子焼きとウインナーに、冷凍食品をチンしたコロッケと唐揚げがいつもの定番だった。
「いただきます…」
パクッとおかずをほおばる。
「うん、おいしい」
ーーーー
「ごちそうさまでした…」
私にはいつも、心に浮かぶ面影があった。
七年前、私の命を助けてくれたあの人は
今どこで、何をしているのだろう?
あれから一度も会ってはいないけど、きっと元気で暮らしてるんでしょうね……。
と、その時。
「おっロンリーガール!
こんな所にいたのかよ」
突然響いた声に、私の心臓が止まりそうになった。
「わ、びっくりした…!」
見るとそこに立っていたのは、クラスメートの吉野海斗
(ヨシノカイト)だったのだ。