バラードは君だけに
第12章 束の間の愛に
「あ〜、コホン。ではもうお帰りになって結構ですよ」
「あ、はい。どうもありがとうございました」
「ありがとうございました」
「お大事にどうぞ」
医師たちが病室から出て行くと、湊さんが私に言った。
「美羽、何か美味しいものを食べに行こう」
「お腹なら空いてない…」
「食べなきゃだめだって」
「…」
「今日の昼まで」
「え?」
「海斗が戻る時間まで、俺は君の保護者をやめる」
「それはどういうこと、ですか?」
「誰にも邪魔されない、二人きりになれる場所へ君を連れてく」
「湊さん……?」