それは恋のレッスン
第1章 ☆習い事はじめます
「宇佐美くんは字が汚ないなぁ。だから嫁の貰い手が無いんじゃないの…お前」
グサッとくる課長の言葉に、私、宇佐美 美緒(うさみ みお) カッコ――28才独身――カッコ閉じる。は、猛烈にムカついている。
それというのも。
今朝出社してすぐに、私は課長から香典袋と筆ペンをおもむろに渡されて、強制的に香典袋の宛名書き押し付けられた。
急いで書いてくれないか、頼むよ―――そう課長から頼まれれば、部下の私が無下に断るのは難しい。
でも、香典袋なんて普段滅多にお目に掛かる機会が無いし、筆ペンを使って書くなんて敷居が高いに決まっている。他人の名前を書き馴れているはずもない。
自信が無かった私は、
“下手ですけどいいんですか”
と、もちろん課長に対して前置きをした。
でも、それでもどうしても手書きが良いと言われて、渋々書いた訳で―――…。
なのに。その香典袋を見てのさっきの課長の発言に、もう!腹が立って仕方がない。
……そもそも、お嫁に行けないのは、絶対そのせいじゃないです。
まだ週はじめ。
一週間の始まりの月曜日なのに、そのせいで、朝から気分が悪いったらなかった。
課長の言葉は朝から私の感情を逆撫でしたのだ。