それは恋のレッスン
第1章 ☆習い事はじめます
そんな気持ちを込めて恨めしそうに恵美子の顔をみれば、意外にも優しい顔で微笑んでいて、ちょっと拍子抜けしてしまう。
「嘘よ、冗談。
何かを始めるっていうのは素敵なことだもの。頑張ってみればいいじゃない」
「…そう、かな」
「甘ったれな美緒が、自分から何かを始めようなんて言い出すなんて、凄く珍しいことだしね」
……前言撤回。やっぱり酷い。
「やってみなよ!新しい世界が広がるかもしれないじゃない?」
「…うん。やってみようかな」
恵美子の言うことは当たってる。自分に自信が無い私は自分から動くことは滅多にない。だから―――恵美子の言葉に背中を押される形で、私はお習字を習いに行くことに決めたのだった。
決めてしまえば、迷いも無くなり俄然やる気も湧いてくる。
……みてろよぉぉ!課長~!
そうと決まれば善は急げ!早速書道教室をリサーチになきゃ。
狭い給湯室中、珈琲の香りに包まれながらお習字を習いに行くことに決めた私の心は、課長へのリベンジに燃えていた。