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第3章 Episode3 挫折




「お、あった」

教壇(きょうだん)の下に隠してあった下履きを発見し、黒斗はやれやれと溜め息を吐いた。


「あ、あのー……何で美術室に下履きが?」

「うちのクラスのバカが隠したんだ」

「ええーっ!? 先輩みたいな強い人でも、いじめられてるんですか!?」


ひどく驚いた様子をみせる玲二。

「別に、いじめられてる訳じゃない」

何でもないように答えるが、玲二は「本当ですか?」と言うようなジト目で見つめてくる。


嘘ではなく、本当のことだ。


内河の“下履きを隠す”という行為は、黒斗が鈴と親しくなった頃から始まっているが、単に“下履きを隠す”だけなので、いじめかいじめではないかと聞かれれば、違うだろう。


正しくは“恋敵への嫌がらせ”というべきか。


「……まあ、うざったいのは間違いないけどな」

ポツリと呟かれた黒斗の言葉に、玲二は「いろいろ大変なんですね」と同情の目を向けた。


「ところで、お前は何をやってたんだ? 何かを描こうとしてたようだったが」

突然、話題が自分のことになり、玲二がビクリと肩を強張らせる。


「あ……いやー、ちょっと画家さんになった気分を味わいたかっただけですよ」

「……絵を描くのが好きなのか?」

大げさに手を振って、否定する玲二。

「とんでもない! オレ、絵心とか無いし芸術とかサッパリなんで!」


にこやかに笑う玲二だが、黒斗は彼の嘘を見破っていた。



死神である黒斗には、人間の魂の状態が手に取るように分かる。

感情はもちろん、罪を犯した回数も黒斗にはお見通しなのだ。

先程、震えていた時の玲二の魂は恐怖を感じていた。

彼が感じた恐怖は、何が原因なのかは分からない。

だが、玲二自身が話したがらない為、黒斗もそれ以上は聞かないようにする。

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