デスサイズ
第3章 Episode3 挫折
そして現在
「1人になりたい」と言って母親を屋上から追い出し、有理は空を見上げていた。
「……俺って…何だったんだろう」
幼い頃から“天才”と呼ばれ、挫折を知らずに育った有理。
プライドが高く、精神的に脆い一面があった彼はライバルの出現に挫折し、狂った。
“天才”
そう呼ばれることが自分の全てだったのに、今では、もう絵を描くことが出来ない。
ライバルを潰して、自分が1番になることも出来ない。
―こんなんで、生きている意味なんてあるのか?
「無いんじゃないか」
心の声を見透かされたように聞こえた声に、有理が振り向く。
そこにいたのは、血のように赤い瞳をした茶髪の青年だった。
「天才じゃない君に生きている価値なんてない」
悪魔のように口角を吊り上げながら、青年がにじりよる。
「夢を失った君に生きている価値なんてない」
青年の言葉を聞く度に、有理の心が冷え込んでいく。
いつの間にか有理の目の前にいた青年が、ニッコリと笑った。
「僕が手伝ってあげるよ」