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第3章 Episode3 挫折




一方、その頃


赤羽病院の屋上で1人、空を仰ぎ見る有理の姿があった。


左腕は付け根から無くなっており、右手首の先っぽには包帯が巻かれている。



「…………」

掌が無い右手首を見ながら、有理は数分前の出来事を回想する。






「有理、洋介くんがお見舞いに来てるわよ…?」

「…………」


病室の入り口から、遠慮がちに有理の母親が声をかけるがベッドの上で横たわる息子はそっぽを向いたままだ。

「ねえ、有理……」

「……うっせえな、帰らせろよ!! 今は誰とも話したくない!!」


「わ、分かったわ」


怒鳴りつけてきた有理に驚きつつ、母親は病室を出て、外で待っている洋介に話をしに行った。



(……俺の腕…俺の夢…俺の…才能……)


左腕と右手と共に、画家になる夢を失った有理は、ボンヤリと窓の外を見つめた。

死んだ魚のような目には外の風景など写っておらず、焦点も定まらない。


「有理」

扉を開けて、母親が戻ってきた。


「洋介くん、明日も来るって。あと……“腕が無くても諦めるな。僕だって乗り越えられたんだから、君にも出来る”……って、伝えてって」


無責任な洋介の励ましに、有理のはらわたが煮え切る感覚がした。

「ねえ有理。そんなに落ち込まないで……どうしても画家になりたいなら、洋介くんみたいに足を使うとか…」

「黙れよクソババア!!!!」

勢いをつけて上半身を起こし、怒りを露に母親を睨みつける。


「俺とアイツは違うんだ!! アイツは才能に恵まれた天才だから、足なんかでも描けるんだ!! 所詮、才能で劣る俺には無理なんだよ!!!!」


言いたいことを言い切った有理の息があがり、暴言を吐かれた母親は震えて涙を流す。


「……ごめんママ。ムシャクシャして…外の空気が吸いたいから、屋上まで連れてってよ」

突然しおらしくなった息子に、母親は「いいのよ」とだけ呟いて、共に屋上に向かった。


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