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第4章 Episode 4 すれ違い



「うるせえわ!! とうとう壊れやがったか!!」

激昂した父親が先程と同じように、母親の頭を殴りつける。

「アハハハハハハハ!!」

それでも母親は笑い続けている。


「病院に行けや病院にっ!!!!」

殴るのと腕を引っ張るのを父親が交互に繰り返す。


「いたいよぅパパ……いたい、いたい…」

笑うことをやめた母親が、枯れた声で痛みを訴えるが、父親の暴力は止まらない。


「……いたいんだってばあああ゛あ゛!!!!」

喉がはちきれんばかりの大声を上げて、母親が父親を押し倒した。



「うわーー!! 殺されるー!! わー、わー、助けてくれー!」

揉み合いながら父親も狂ったように叫び出す。



「…………」


それを見ていた少女は、部屋の隅で踞った。


―もう耐えられない

―逃げたい、逃げたい

―この地獄から出ていきたい


震える指で携帯を取りだし、『110』と番号を打ち込んだ。



「……もし、もし。助けて……おとう、さんが、おかあさんを……殴って…」


この後、どうなるか少女は考えていなかった。


ただ父親と離れたいと、母親と2人で暮らしたいと、その思いしか無かった。

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