無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「ほらぁ、さっさと出すもの出せよおジジイ！」

夜も遅くなり、人波もまばらになっている街。

そんな中、更に人気の無い路地裏で覆面を被った男が一人の中年男性に一方的な暴力を奮っていた。


「しぶといんだよ！ さっさとよこせや!!」

地べたに横たわる男性に覆面の男は容赦なく鳩尾に鋭い蹴りを入れていく。


「う、げぇ、ぐっ……」

激しい衝撃に意識が飛びそうになるが、それでも男性は歯を食い縛り、茶色い長財布をしっかりと握り締めたまま離さない。


「いい加減にしろや!! ぶっ殺すぞ!!」

怒りを露に覆面の男の暴行はヒートアップしていく。

鳩尾だけでなく頭部や急所にも殴打は及び、男性の財布を握る力がついに弱まる。

その隙を見逃さずに覆面の人物は財布を奪い取り、中を確認すると満足げに頷いた。


「最初っから、素直に渡しておけば痛いめに合わずに済んだんだよ」


覆面の男はそう吐き捨てると足早にその場を去っていった。



その背中を男性は唇を血が滲む程に噛み締めながら見つめていた。

「……なん、という……無慈悲な…この世には、神など居ないのかー!!」