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第1章 Episode 1 断罪者




(へへへ……これだけありゃあ当分遊びには困らねえ)


紙幣を数えた後、奪い取った財布を懐にしまうと男は覆面を脱ぎとる。

露になった素顔は、まだ表情にあどけなさを残した青年のものだった。


(こないだのオッサンはしけた金だったけど、今回は大量だな)


スキップでもしだしそうな軽い足取りで青年は自宅へと急いだ。





─何度目だ?





「っ!?」

突如、強い悪寒と殺気を同時に感じ青年は思わず足を止める。


(な、何だ……今のは……?)

誰かの声が聞こえたような気がして周囲を見回すが、今この路地には自分一人しか居ない。

それなのに、誰かにジッと見詰められているような薄気味悪い感覚がする。

気のせいか、と再び足を進めようとするが今度は背後から足音が聞こえてきた。

コツ、コツ、コツと徐々に足音は此方に近付いてくる。


(まさか…さっきのジジイが追いかけて来たのか!?)

こんな事ならもっと痛めつけておくべきだったと苛立ちつつも青年は追っ手を振り切ろうと走り出す。

だが彼を追う足音は一行に遠ざからず、それどころか近づいてきている。


(面倒くせー! こうなったらもう一度ボコボコにしてやらあ!)


あんな非力な中年くらい簡単に倒せると思いたち、立ち止まると同時に背後へと振り向いた。

だが振り向いた先には誰もおらず、ただ暗闇が広がっているだけだった。

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